審査員インタビュー

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Web広告のスタークリエイター、求む!Vol.03 箭内道彦


普段、CMを中心に活躍されている広告クリエイター代表として、今回は「風とロック」「風とバラッド」の箭内さんに審査に加わっていただきます。広告の枠をはみ出してフリーペーパーを作り、テレビ番組制作などにも関わる箭内さんですが、Web広告は今のところ、それほど深くタッチしていないとのこと。広告のプロとして、今のWeb広告の現状をどう見ているか、お話しいただきました。

Webから火がつく時代は、
もうすぐだと思います。

—早速本題に入ってしまうのですが、Web広告について、どう思われますか?
あの、いきなり課題みたいな話になっちゃうんですけど(笑)、今、一番気になっているのが、「バナーに気づくのが少しだけ遅れる」ってことなんですよ。何か他のリンクをクリックして、画面が変わろうとしている時に、やっとバナーに気づくんです。「あ、なんか面白そう!」って思った時には、もう次の画面になっていて。戻るじゃないですか。そしたら、ないんですよ、そのバナーが。違うバナーに変わってる。あれ、人間の目の動きのことが考えられてないですよね。もったいないなあ。今、Webを見てて、一番気になります。

—なるほど〜。言われてみればそうですねー。鋭いご指摘です。Webはよく見てらっしゃるんですか?
いえ。人並みです。僕、自分が人並みだってことには、相当の自信があるんですよ(笑)。見てないわけじゃないけど、それほど研究したりもしてません。Webは、まだですね。Webから火がつく時代は、もうちょっと先です。もうすぐ来ますけど。

CMと違って、外れのWeb広告は、
マイナスイメージになる。

—え? Webの時代はまだなんですか?w
間違いないです。でも、広告についていえば、正直言って、Webの状況に制作物が追いついてない感じがします、CMや紙媒体に比べたら。でも、CMと違って、Webって外れの広告を作るとマイナスイメージになるじゃないですか。人って、苦労した時には報われたい願望があるから、わざわざWebサイトまで見に行って、つまらないと腹が立つんですよ。逆に、映画みたいに自分でお金を払うところまでいってしまうと、なかなか否定もしにくいんだけど、Webだとそこまででもないし。怖いですよ。下手なものを作れない怖さを、これからスポンサーは知るでしょうね。作るほうにとってはチャンスかもしれないけど。

—作るほうにとってはチャンスかもしれない、と。
テレビの世界でも、ハードディスクレコーダーのCMスキップ機能が登場して、僕としてはとっても良かったと思ってるんです。スポンサーが、録画したくなるCMを作らないと、見てくれないという前提に立つようになったから。面白いCM作らないとダメだって、皆が思うようになって、仕事しやすくなってきた。Webは、最初からそういう環境だと思います。いいものを作らないと、逆効果になるわけだから。

1人スターが現れたら、
Web広告は一気に盛り上がるでしょう。

—では、そんなWeb広告を作ろうとしている人たちに、メッセージをお願いします。
きっと、Web広告界に1人スタークリエイターが現れたら、どっとみんながそっちに向かうと思うんですよ。でも、それは今、別の媒体で活躍しているクリエイターじゃないと思います。紙媒体もテレビコンテンツも、意外と伝統芸能だから、すぐに対応できないんですよ。だから、この1-click Awardには期待してます。ここから出てくるといいなあ、スターが。

他力本願ほど、
すばらしいものはないですよ(笑)。

—でも、良いWeb広告を作るには、どうしたらいいんでしょう。何かヒントをいただけないでしょうか。
僕は最近広告を作るとき、「どうしたらブログのネタになるか」を考えてます。昔から、情報番組やスポーツ新聞に取り上げられることを目標にしてましたから、別にたいして変わったわけじゃないですけど。意外と、ブログってネタ探しが大変で、新しいCMも格好のネタなんです。みんなのブログに取り上げられた瞬間、CMの情報が生き物になる。僕は、Web広告も同じだと思いますよ。みんなのネタになるかどうかが勝負ですよ。

—つまり、デザインがすごい!とか、そういうことではないと。
自分の力だけでは、広告はダメなんですよ。他力本願ほど、すばらしいものはない(笑)。最近、みんなが「風とロック」で遊ぶようになったんですよ。意外な人が、面白い企画を僕のところに持ってくるんです。例えば、『風とロックとユナイテッドアローズ』という雑誌も発売になりますが、この企画をいただいたときはさすがにビックリしました。そういう状況を作ることが一番大切だと思います。そうそう、僕、前に秋山晶さんに「箭内さんはヴァーチャルだ」って言われたことがあるんですが、あれ、嬉しかったなあ。

—ありがとうございます。では最後に、応募する方々に一言お願いします。
スター求む!こういうところから、バッと出てきた人が、広告の世界を変える可能性が、今はあると思います。チャンスですよ。いやホント、ここからスターが出るといいなあ。僕はその目撃者になりたい。