審査員インタビュー

Vol.01 トム・ヴィンセントVol.02 カイブツVol.03 箭内道彦Vol.04 内山光司Vol.05 安達亨
青くさくていい。粗くていい。 自分なりの発見を、おもいっきり表現して下さい。 Vol.04 内山光司


GT inc」。Web広告草創期から、ビッグ・クライアントのWeb広告を数々手掛けてきた内山さん達が、全てのメディアで新しい広告のカタチを実現するために設立した会社です。心機一転、「もっと刺激的なプロジェクトをいくつも作りたい」と意気込む内山さんに、『1-click Award』への期待を語っていただきました。

完成度の高さより、大事なことがある。
コア・アイデアが良いかどうか。

—『1-click Award』だけでなく、いくつものWeb広告賞で審査員をされていらっしゃいますが、
 最近の作品はいかがですか?

広告賞もそうなんですが、WEB業界全体が、最近ちょっと停滞してる感じがしますね。話題性のある大規模プロジェクトも今のところ特に聞きませんし。Web2.0が話題って言ったって、昔から業界にいるオレ達には、「何をいまさら。そんなこと、10年前から考えてるよ」って感じだしね。とにかく、いまこの瞬間はバイラル・ムービーに代表される「映像」だけが面白くて、他はなんだか刺激に乏しい。残念です。

—そうなんですか。じゃあ、『1-click Award』には期待も大きいわけですね。
楽しみですね。応募する方は、ぜひオレを悔しがらせて欲しい。「先にやられちゃったよ〜」って、言わせて下さいよ。それが楽しみで、いろんな広告賞の審査をしてるんですから(笑)。いや、ホントに。

—どんな作品を見ると、悔しいと感じるんですか?
やっぱり、「オリジナリティ」と「心を揺さぶるパワー」でしょうね。もちろん、仕上がりの完成度も気になるけど、それよりも、『コア・アイデア』がよいかどうかのほうが、ずーっと大切です。青くさい、粗いできあがりの作品でも、いいんです。モノマネでない、自分なりの発見やアイデアがあるかどうか。その芽を見つけたい。結局それが、他の人の心を揺さぶるんですよ!。皆さんも、「うわ、すっげー!」って思う表現は、そういうものでしょう?

皆が、なんとなく「おかしいな」と感じてることを、
表現するといいと思うよ。

—確かに、そうですね。最近、どんな作品が面白かったですか?
結局、YouTubeが面白いんだよね。みんなと同じ(笑)。例えば、新会社「GT」に参加してくれた伊藤君の作った、NIKEの『秋葉マン』なんて、オレもすごいと思う。なんてったって、秋葉原の街中で、中年の男性を全裸にしちゃってるんだから(笑)。世界的企業の広告で、ここまでできるのも、YouTubeというパンクなメディアが市民権を得たからでしょう。あと、広告じゃないけど、「グループ魂」のネタを元にした『中村屋』のフラッシュにも、「やられた〜!」って思いました。ちょっと古いけど。

—なるほど。そのコンテンツのパワーって、どこから生まれてくるんでしょうか?
なんとなく、皆がなんとなく「変だな。おかしいな」と思っているけど、まかり通っていること、たくさんあるでしょう。それを、「これ、おかしいよね」って、見せてあげると、「そうだよ!」っていうみんなの共感を集められる。YouTubeで閲覧数の多い映像は、だいたいそうやって共感を集めてるよね。それから『中村屋』フラッシュを見たときに衝撃だったのは、「Webって、ビジュアルを動かさなくても面白いことができるんだ!」ってこと。それまでは、Webはいろんな表現の制約がある中で、どこまでビジュアルで頑張るかっていうのが常道だと思っていたわけ。でも、どこかで「違うんじゃないか」とも感じていた。それをああいうカタチでスパッと「違うよ」って言われると、快感なんだよね。

これからは、全媒体をクリエィティブできる人が売れる。

—では、ちょっと話題を変えて。内山さんご自身は、これからどういう方針で活動されるのでしょうか?
個人的には、昔から、Webだけでなくすべての媒体で、すべてのタッチ・ポイントをコントロールして表現したいと思ってきました。今年も、TVCMをいくつか作ったし、毎週、新聞15段を作る企画も手掛けている。新しいバイラル・ムービーも進行中。まだ詳しくはいえないんだけど、アートとゲームと広告をマッシュアップした「アートバタイジング」なインスタレーションイベントも、この年末に画策してます。
これからは、そうやって全てのメディアでトータルにクリエイティブを発揮することのできるクリエイターが売れる時代。メディアの使い方1つとっても、新しいクリエイティブの可能性が隠れていると信じて、オレは毎日考えてます。

セオリーがないのが、この世界の良いところ。
面白いこと、やったもの勝ち。

—内山さんはWeb広告に関わられてから長いですが、Web広告業界って、どうですか?
良くも悪くも、このWeb広告業界には「権威」がいないんですよ。こんなことを言っても、多分誰も怒らない(笑)。まだまだ、そんな未成熟な業界です。セオリーはなし。面白いこと、やったもの勝ち。若くても、1つ良いものを作ったら、すぐに認められます。でも、Web広告は、確実に広告業界の「台風の目」にはなっているよね。これからどんどん刺激的な環境になることは間違いない。飛び込むなら、今はとってもいいタイミングだと思います。

—ありがとうございます。では最後に、応募する方々に一言お願いします。
「こいつの才能は早めにツブしておかないとヤバイ!」とオレに思わせるくらい、びっくりするような作品を作って下さい。頑張ってね!