審査員インタビュー

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理屈じゃなく、面白いと思わせればOK。Vol.05 安達亨


「デジスタ」初期の名作『ユーロボーイズ』の作者、AC部の安達さん。もともと映像コンテンツのプロフェッショナルですが、最近はWeb界にも進出し、伊武雅刀さんのオフィシャルサイトを手掛けられたりもされています。映像世界の人からWebはどう見えるのか、最年少審査員として今のWebと映像の状況をどう見ているのか、伺ってみました。

Webの世界は、あちこちで楽しそう。

—1つサイトを作られてみて、いかがでしたか?
ここ最近、Webの世界でも、映像をかなりストレスなく使える環境が整ってきていたので、そろそろWebも本格的にやってみたいなあ、と思っていたんです。そんな時に、タイミングよく紹介された仕事が、伊武さんのサイト。だから、作りながら、技術もいろいろと覚えていっている、というのが正直なところです。自分のやりたいことが100%できるだけの技術はまだなくて、もどかしい毎日を過ごしてます。多分、今回応募される方の中には、僕よりもテクニックのある人、けっこういると思いますよ。というか、僕も応募したいくらいです(笑)。

—Webの世界は、どういう状況に見えますか?
あの、おもしろいです(笑)。映像の世界とは全然違う。Webを見ていると、毎日、驚くことばかりです。YouTubeみたいな映像系コンテンツにも発見がありますし、そうじゃないところもすごい。映像は、良くも悪くも作法が完成している世界ですから、上手だなと思うことは多くても、ビックリすることは、あまりない。Webの世界に触れていると、いつも新鮮な気分になります。

マウスを使うのって、直感的で原始的。

—Webと映像の違いについて、もっと詳しくお聞きしたいのですが。
そうですね…。Webのコミュニケーションでは、時間軸が決まってないし、順番も決まってない。観るほうに自由がありますよね。そこが一番違うところじゃないでしょうか。そんなこと、映像じゃありえないから。だから、Webの世界では、作法や制作フォーマットも、決まっているようで決まってないでしょう。単に未成熟っていうこともあるでしょうけど、観るほうに自由があるから、フォーマットが作りにくいんじゃないかな。で、その分、観る人がお作法をわかってないといけない。Webに触ったことのない人が、いきなりWebサーフィンして情報を見つけるのは難しいですよね。結局、開かれているようで、閉じた世界だという感じがします。

—Webのインタラクティブ性については、どう思われますか?
マウスを使うのって、原始的だと思うんですよ。直感的に、人間の五感を使ってる感じがする。コミュニケーションっていっても、話すのとは全然違う。理屈じゃない、人間の深いところに訴えるメディアだと思うんです。そこがおもしろいですね。

僕は、いつまでも初期衝動を大事にしたい。

—なるほど。そのWebという土俵で、安達さんはどういう表現を目指しているのでしょうか?
僕の場合は、初期衝動をいつまでも大事にしたいと思って、作ってます。だから、あまりメジャーになるのも、ちょっとなあ…、と。楽しくなくなるのは、イヤなので。そのことでは、いつも葛藤してます。それは、映像でもWebでも、特に変わらないですね。

—ありがとうございます。では最後に、1-click Awardに挑戦する人に、アドバイスをお願いします。
いやー、僕もアドバイスできるような、偉そうな立場には全然ないので…。さっきも言いましたけど、Webって理屈抜きで五感に訴えられるメディアだと思うので、「おもしろい!」ってみんなに思わせることさえできれば、きっと勝ちです。逆に言うと、表面のデザインやメッセージよりも、実は、五感で感じる裏の部分に、いろいろと工夫が必要なんじゃないかと思います。…なんて言ってますけど、どうすればいいのかは、僕もまだよくわかりません(笑)。